親友キャディーの死を背負って戦うT.ワトソン
USPGAツアー
悲報はスタート直前に届いた。
ヒラリー夫人の運転する車から降り、ロッカールームで準備していたトム・ワトソン(米)を警備員が呼びに来た。「奥様がドアのところでお待ちです」。その瞬間、ワトソンはすべてを悟った。
30年来の専属キャディーで親友でもあったブルース・エドワーズ氏の訃報だった。徐々に筋肉が動かなくなるALS(ルー・ゲーリック病)と戦い続け、昨年はワトソンと共に全米オープン初日首位に立って涙を流した男が、この日の朝、フロリダの自宅でついに力尽きたのだ。
ワトソンはしばらくの間、静かに夫人と過ごし、コースへと出て行った。ヒップポケットに入れたヤーデージブックに宿るエドワーズ氏と一緒に。
3週間前のベイヒル招待の時、エドワーズ氏は、以前作ったオーガスタナショナルのヤーデージブックを届けにやってきた。会ったのはそれが最後。そのメモには、コースの細かいところすべてがエドワーズ氏の手によって書き込まれており、一緒にプレーしているも同然。時には涙がこみ上げてくるのをグッと抑えながらプレーしたワトソンは、ポケットのエドワーズ氏と共に18ホールをプレー。4オーバー55位タイ(暫定)でホールアウトした。
「これまで大切な人をなくした時に『一緒に過ごした日々の思い出が、失った穴を埋めてくれるはず』と手紙を書いてきたが、それが事実だと信じている」と、悲しみの中、ワトソンは思い出のオーガスタでのプレーを続ける。